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2004年06月22日
数年前に書いていた文章を見つけたのでちょっと修正してみたり
ある日、会社の後輩のHから「Kさん、ちょっと今晩飲みに行きませんか? 相談もあるので…」と誘われた。
可愛がっている後輩だったので何かの困っていることでもあるのだろうと思い、友達のやっている恵比寿の地下にあるバーへと向かった。
時は広告業界がやっとネット広告に目を向け始めてきた頃だった。
その数年前には、同期の亀井と西海岸に二人で出張して某超有名ポータルサイトYへの出資話をいただき、喜び勇んで社内プレゼンをかけた際には「そんなもんで飯が食えると思うのか!」と一喝されたものだったが、その一喝した室長本人が役員会で「私がインターネットを導入したY木沢です」と発表するようになった、ちょうどそんな頃である。
Hが声をひそめて「お世話になっているKさんだから言うんです。300万円出資してください。確実に3億円にはなりますよ」と、こう切り出してきた。
聞くと、ネット広告の専門会社を作るのだという。ネット広告についてはその可能性を大きく感じていたし、第一ネット広告の理論的なところ、効果測定の必要性などはHに教えていたりもしたのだ。当然面白いとは思った。
だが、彼は今ボクと彼が在籍している会社を辞めて起業するのではないという。
勝算は? と聞くと「ボクが広告を売ります」といけしゃあしゃあと答えたのだった。
それって…
明らかに商法、出資法違反だ。
その点を説明するが彼は「絶対に大丈夫です」の一点張りだった。
その時彼はまだ20代半ば。(あ、オレも二つくらいしか違わなかったんだけど)
そんなところで作った3億と、一生の間後ろめたい思いをするのとではどちらが大切なんだろうか。
ちょっと論点をずらして「なぁ、本気でやれるって思うんなら、会社辞めてやったほうがいいと思わないか? 売り手が真剣でないもんを誰が買うんだよ。それだったら300万といわずもっと金を集めて出資してやるよ」と説得もしてみたが「いや、ボクがD社にいてこそ営業ができるんです」と取り付くしまもない。
だからそれはやってはいけないことなんだよ…
話は生き方にまで及んでしまった。
「でもさ、何にするんだよ。別にウチの会社、食うには困らないじゃんか。それなりに遊べるぜ」
「実は、僕は学生の時から映画を作っているんです。起業してお金を作ったら全部映画制作に使います」
一時の後ろめたさは自分の夢の実現のためだ、と言うのだ。
それなら、とこの話は聞かなかったことにしてあげることにした。
数年後。
彼は会社を辞めて、自分が立ち上げた会社に副社長として入社した。それから彼は何冊かの本も出したらしい。
しかし、映画を作っているという話は聞かない。
たぶん、彼は数億円のお金を得たのだとは思う。
ただ、あれからの彼には、面映い言葉で言えば「青春時代」というものがなくなってしまったんだろうと思う。
その後の彼とは、すれ違うことはあるが、見ていてつらい。
彼が本当にやりたかったのはなんだったんだろう。
投稿者 KQZ : 2004年06月22日 12:37 | [EDIT]
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