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2004年09月14日

快楽のサイクルとかなんとか

なんかずいぶん前になっちゃったエントリーの続き。
日が開いちゃったので変なところからスタートしてみるか。

演劇集団に所属していた小谷くんらしく

演劇にかかわっているものとしては、CD、テレビ、ビデオなど録画媒体で人に見せられるものの伝播しやすさはうらやましいです

などと書いてますが、そこら辺をちょっと整理してみましょ。
とはいえ、まずはどこから書き始めるべきかなぁ…
……
んー。
サービスを提供する側からみた「楽しみのサイクル」から始めますか。
全てのモチベーションの源泉というか。

サービス、特にエンターテインメントに携わる人なら全員が理解してくれると思うけども、全てのサービスには固有のサイクルがある。

ここでいう「サイクル」というのは「何かをしでかそうと企てる」ところからはじまって「実際におこな」い、さらに「反応がフィードバックされる」ところまでのことを意味する。

(思い出話が長いので飛ぶならコチラに

一番初めにそれに気づいたのは高校三年の冬だった。
当時僕はアメフトがかなり強い高校にいて、高三の12月まで関東大会の三位決定戦に出ていた。当然自他共に認めるお気楽な浪人決定コースであったため、その最後の試合の翌週に渋谷のエッグマンだかTakeOFFセブンだかで行われた師匠・嘉門達夫さんの東京初ライブに、親父のサイドボードからレミーマルタンのV.S.O.P.を一瓶くすねて楽屋に遊びに行ったのだ。
今となってはたいした酒ではないのだが当時はドキドキとばれないように隠しながら家をでたものだった。

ライブ前のスルーが終わった後に楽屋に行くと嘉門さんがこんなことを聞いてきた。

「なぁ、さっき『ジミー&ハデー』って曲やったやろ? 東京の地名とかでさ、地味なとこと派手なとことか、オレあんまわからんねん。なんかないか?」
「んー、ここが渋谷ですから、派手な待ち合わせ場所は『ハチ公』『モヤイ像』で、地味なのは『東京駅銀の鈴』とかじゃないすかね? 『いけふくろう』とかもあるけど知ってるかなぁ」
「ほうほう。デートスポットだとどこらへん?」
「んー、派手なのは『東京ディズニーランド』とかかな…。地味なのは『たばこと塩の博物館』とか『目黒寄生虫館』とか色々ありますよ」
「そんなんあるんかい? けったいやな。でもそんなん普通知らんやろ」
「たばこと塩の博物館はこのすぐ近くですから大丈夫じゃないですか?」
「派手なほうはディズニーかなぁ」
「やっぱ、『派手なデートは、このエッグマンで嘉門達夫のライブを見に来る事~』とかやるとベタですかね?」
「あ、それもええなぁ。地明かりばーっとつけてな。目潰し(ともに照明の種類)と」

そんなこんながあってライブが始まった。
東京で生まれ育ったものとしてはこんなに人気がある人だとは全然知らなかったのだが、客席は満員ですごい熱気だった。(どこで知り合うようになったのかはまた長い話なので割愛する)

周囲は関西弁を話す人だらけで、どんな細かいギャグにも異常に反応が速い。翻弄されつつライブは進んで行き、ほどなくして先ほど打ち合わせをしていた曲が流れてきた。
ネタがどんどん歌い進み、件の「♪ジミー、ジミー、地味な東京のデートスポットは…」と始まった。
つい一時間ほど前に世間話をしていた、そのネタだった。
自分が考えたネタが会場に流れ、満場の客席が笑いの渦に包まれた。
そりゃそうだ。関西出身の人にとっては人気タレントだった嘉門さんが初めてやる東京のライブ、来るのは関西出身の人ばかり。そこで嘉門さんが東京のネタをやれば驚くのは当たり前のこと。
その熱狂の真ん中に高校三年の冬の洟垂れ小僧のKQZ少年がいたわけだ。

もうね、こんなんをそんな時期に体験してしまったらトリコですよ。変な話が陶酔に近い体験。
本当に些細な事なのだが、あのときの瞬間は今でもありありと覚えている。
だから嘉門師匠には頭が上がらないのだな。いまだにね。

--

と、まぁくだらん思い出話が長くなってしまった。
話を「サービスにおける固有のサイクル」に戻そう。

ライブの面白さというのは、供じ手(変な日本語だが仕掛ける側、とでもいう意味ね)の思い/動きと、受け手の反応との差がものすごく小さくてダイレクトだ、と言う点に尽きると思っている。
その代わり体験できる(or 体験させられる=インフルエンスを与えることの出来る)範囲はおのずと制限される。
それが小谷君には悲しいのだろうけど、しかし体験強度は非常に高い。まぁトレードオフってところかな。

でもってまた自分の体験に戻るが、大学はなんとか浪人もせずにとある大学の建築学科に入り込み(多分入試にあったデッサンの点がよかったのだろう)、都市計画系にいくか設計系にいくか迷った時に「サービスにおける固有のサイクル」という事に思いいたったのだ。

たとえば、建築における「サービスにおける固有のサイクル」はというと、
個人建築は「タイムスパンは一年程度」「体験範囲は家族の人数+親戚や友達の数(+ライフスタイルによってはご近所や会社の部下なども)」「(建築物としての)保持期間は10年~30年」ということになる。
都市計画系だと「タイムスパンは10年から50年を超えるものも」「体験範囲は数万人から数千万人以上」「(構築物としての)保持範囲は30年から数百年」というように、かなり異なってくる。

同じ時期に既に放送作家としてラジオ番組をやっていたり、雑誌のライターをやっていたのでそちらの方もかじっていたのだが、これまでにやってきたエンタテインメントに関する事柄に関して簡単にまとめてみると↓こんな具合になるだろうか。

 

タイムスパン

範囲

保持期間

接触密度

個人建築

1年

家族+α

10年~30年

毎日&濃い

都市計画

10年~50年超

数万~数千万人

30年~100年超

毎日

ラジオ、テレビ

1週間

数万~数百万人

基本的にゼロ

(基本的に)通過

雑誌

一ヶ月

数万~数十万人

数年程度?

(基本的に)通過

CM

数ヶ月

数千万人

数日~一年

(まったくもって)通過

新聞広告

数ヶ月

数千万人

一日

(基本的に)通過

ライブ

数ヶ月

あるいは瞬間

数百人~数千人

二時間程度

(ビデオなどもあり)

通過だが非常に濃い

映画

数年

数万~数百万人

数週間&ビデオ

通過だが映画館での視聴であれば濃い

ゲーム制作

1年~3年

数万~100万本

売れるのは二週間。

ハードの寿命は約五年?

濃い

オンラインゲーム運営

数週間

あるいは瞬間

数百人~数千人

数十分程度~

濃い

セックス

(人によってはバイアグラのお世話に…?)

一人

人による

この上なく濃い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※WordでHTMLを書き出したのできったないコードだがご容赦をば(昔の自分なら許さんなぁ…)

たとえば、ラジオ番組の「サービスにおける固有のサイクル」は、「タイムスパンは週に一度」「体験範囲は数万人から数十万人(ただし各人の体験にあたっての強度は千差万別)」「保持範囲は基本的にゼロ(単行本にまとめるとかリスナーがテープに録っておくとかいうこともあるにはあるが)」となる。
雑誌のライターの「サービスにおける固有のサイクル」は、「タイムスパンは月に一度(雑誌による)」「体験範囲は数万部(ただし回し読みや他メディアがぱくったり、などの可能性もアリ)」「保持範囲は古本などのことも考えると数年程度」ということになる。

で、いったいどれが楽しくて、どれを仕事として選択するのか、と迷い始めたのが就職の時であり、色々考えた結果が今も番組作ったりサイト作ったりゲーム作ったり運営したり雑誌に記事書いたり作詞したりなにしたりかにしたり… と上の表に挙げた全てを飽きず倦まずにこれまでもやってきているしきっとこれからも色々な仕事をし続けていくだろう、というわけなのだな。
まぁはじめに広告代理店に入ったのは「他のメディアはユーザーがわざわざ選んでくれるのが基本だが、広告に限っていれば無理やり(見たくない人にも)見せることができる瞬発力の高いメディアだ」という特殊性に気づいたからなのだがそれはまた別のお話。

でもなにか悩んだりした時に立ち戻るのはやっぱり一番最初のライブハウスでの強烈な体験になるのだと思う。そして立ち返ることの出来る経験が出来たことは幸せなのだとも思う。

なもんで、自分が考えた「仕掛け」があり、それに「誰か」が「どのような状況」で触れるのか、と考えるとわくわくして仕方が無い。新しいデバイスが出るたびにそのデバイスで何が出来るのかを考えるのが好きなので、当然そんなお仕事の話も舞い込んでくる、というワケなのだ。

でもって最初の小谷君の疑念である、

CD、テレビ、ビデオなど録画媒体で人に見せられるものの伝播しやすさはうらやましいです

という部分に戻ると、やってみれば分かるけど記録媒体で伝播するものはキャッチボールが出来ないという寂しい点があるのだな。(欠点でも利点でもなく、あくまでも送り手/受け手の関係からいった「寂しさ」なのだけども。そこらへんはトレードオフですな)
雑誌連載やテレビ・ラジオの連続コーナー企画などの楽しさは究極的には受け手との駆け引きであり、その駆け引きに関して言えば恐らくある程度以上のレベルにいる筈なので、そして恐らくはMMORPGにも適応できるのではないか、と思っている。
演劇経験者を採用したというのはこういったことを考えていたからなのでした。実は。
でもね、もしかしたら上の表って横軸を掛け算していったら同じくらいの値になるのかもしれないなぁ、なんてこともうっすら考えてもいるのだ。


ちなみにちなみに、数日まえにラグナロクオンラインの開発者のKim, Hyakkyuが4gamerの記事で色々言っていて気づいたのだが、

http://www.4gamer.net/news/history/2004.09/20040907000013detail.html

もうね、諸々がラジオのコミュニティつくりとおんなじなのですよ。
次はここら辺について書くかな。反応の上げ方とか維持の仕方とかとか。
来週くらいになりそうだけども。(だっていそがしーんだもの)
まぁあくまでも個人的な備忘録だしー。

投稿者 KQZ : 2004年09月14日 04:07 | [EDIT]

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